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九州大学 植物病理学研究室
Laboratory of Plant Pathology

研究内容ABOUT US

植物病理学とは

植物の病気の多くは微生物が原因です。病原に感受性のある植物が病原に出会い、かつ環境条件が整った場合に病気が発生します。当研究室では、植物や農作物の病気の発生生態、および植物病原体の特性や機能について微生物学、生理・生化学、分子生物学、分子遺伝学、生態学など広範囲な視点と技術を用いて解明し、環境保全に基づく生態系調和型防除法の開発に資する基礎的および応用的研究を進めています。


青枯病菌について

当研究室は主に青枯病菌を対象にした研究を行っています。青枯病菌種複合体は、200種以上の植物に感染する世界的に重要な植物病原細菌です。青枯病菌は植物の根から侵入し、導管内で増殖して導管を閉塞させることによって植物を萎凋・枯死させます。本菌は、分離宿主および宿主範囲の違いに基づき、5つのレース(race)に分けられています。


左)レースによる青枯病菌の分類
中)TTC寒天培地上の青枯病菌のコロニー
右)青枯病菌を接種し、萎凋したトマト

研究テーマ

  • 青枯病菌レース4特異的遺伝子の解析
日本国内では、レース1、3、4の存在が確認されており、このうちレース4はショウガ科植物に感染し、青枯病を引き起こすのに対して、レース1は感染することが出来ません。そこで、本研究ではレース4特異的遺伝子の解析を行うことでショウガ科植物に感染する分子機構を解明し、青枯病菌と植物との相互作用における共進化についての知見を得ることを目的としています。

  • キクから分離された青枯病菌の性状解析
近年九州各地でキクの萎凋・枯死症状が報告され、青枯病菌が病原であると同定されました。青枯病菌キク感染系統はレース1に属しますが、他のレース1菌株と比較して病原性が異なることがわかっています。本系統について病理学的解析・血清学的解析・ゲノム解析を行うことで、詳細な性状を明らかにしようとしています。

  左)温室内で発生したキクの萎凋症状

  • マンゴージンジャーにおける耐病性機構の解明
青枯病菌レース4はショウガ科植物に感染しますが、先行研究においてショウガ科植物の1つであるマンゴージンジャーは青枯病に耐病性であることが報告されています。しかし、この耐病性機構は明らかになっていません。そこで、本研究ではショウガおよびマンゴージンジャーにおける青枯病菌レース4の感染動態比較を行うことで、マンゴージンジャーにおける耐病性機構を明らかにし、青枯病菌抵抗性品種の知見を得ることを目的としています。


左)青枯病菌レース4を接種したショウガ。黄色のV字病斑がみられる。
右)青枯病菌レース4を接種したマンゴージンジャー。病斑はみられない。

  • 青枯病の生物的防除法の開発
生物的防除とは自然界に存在する微生物の拮抗作用を利用し病原微生物の活性を抑え、病害の発生を抑える方法です。青枯病の防除としては土壌消毒や抵抗性品種の利用などが行われていますが、安定的な防除には至っていません。そこで、本研究では生物的防除資材として病気を引き起こさない非病原性青枯病菌に着目し、青枯病菌の生物的防除法の開発を目的としています。




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